「サーキュラーエコノミー移行には連携が重要」。サーキュラーエコノミーに携わる者であれば、一度は聞いたことのあるフレーズだ。システム全体を循環化しようとすれば、当然一社では完結できないことを示す。ときには「連携マインド」を醸成するためにこういった合言葉が使われる。しかし、「どんな連携なのか。その連携による社会・環境もしくは自社へのインパクトは」など、連携の高い解像度を持つことが、表層的な「連携や共創」に陥り失敗を防ぐ手立てともなる。
こうした問題意識から、循環経済つなぐラボは、オープンイノベーションの普及や研究・推進事業を展開している一般社団法人日本オープンイノベーション研究会(JOIRA)とサーキュラーエコノミーにおけるオープンイノベーションのあり方を研究している。
今回は共同研究の一環として、オープンイノベーション研究会代表理事の成富一仁さんと循環経済つなぐラボの那須清和による対談を行い、サーキュラーエコノミーを実現するためのオープンイノベーションについて模索した(全6回)。
第1回ではサーキュラーエコノミーとオープンイノベーションの関係について、第2回ではオープンイノベーションを成功させる要素について、第3回では中小企業とオープンイノベーションの関係、第4回では、エコシステム構築について対話を進めた。第5回では、大企業・投資家・中間支援組織の観点からサーキュラーエコノミーを加速させるためのオープンイノベーションについて探索。本稿の最終回では、これまで対談を通じて得た18の洞察をまとめた。
おわりに
これまでサーキュラーエコノミー実現のためのオープンイノベーションについて、対話を深めてきた。対談で示された論点に加え、知財管理やオープンイノベーションによるインパクト測定、海外動向など個別具体的に掘り下げるテーマは多々あることを承知の上で、本対談を締めくくりたい。
多くの協働が求められるサーキュラーエコノミーでは、オープンイノベーションという概念との相性が良いこと、むしろ不可欠なことが、対談から改めて確認できた。ただし、上手に活用するためには、社内でのビジョン設定やリソース不足分野の特定、コラボの適切な形態、社会課題と自社技術の再連結、サプライチェーン観点での捉え直しなど、戦略的・中長期的観点からも考えるべきことも多い。
そうした検討の先には本対談で出てきたような成功事例が生まれることもわかった。中小企業やスタートアップが受発注の関係からオープンイノベーション的共創関係へ発展させることもできる。
最後に本対談から生まれたエッセンスを項目別にまとめたい。
サーキュラーエコノミーにおけるオープンイノベーションの段階
Phase 1: 内部準備 – 外部連携の前に社内を整える
- ビジョン明確化、アセット棚卸し、共創・競争領域の見極め
Phase 2: パートナー探索・選定 – 戦略的な相手選び
- パートナー類型理解、相互価値設計、プラットフォーム活用
Phase 3: 実行・推進 – 持続可能な推進体制
- 組織体制構築、スモールスタート、エコシステム構築
Phase 4: 成果創出・進化 – 価値への転換と文化定着
- 価値転換実現、文化定着、次なる展開
成功に向けた鍵
- 明確なビジョンと戦略
- 経営層の継続的支援
- 対等な関係構築
- 社会課題への貢献意識
- 社会課題を共通ビジョンに変換
- エコシステム志向
本対談から生まれた18の洞察
- サーキュラーエコノミー移行過程においては、ビジョンに基づいた合意形成やすり合わせがしやすいのでは
- サーキュラーエコノミーにはモノのライフサイクルやサプライチェーン視点・システム観点があるため、オープンイノベーションの必要性が高い分野
- オープンイノベーションの前段階として内部におけるビジョン共有が重要。サーキュラーエコノミーはそれがやりやすいのでは
- オープンイノベーションは目的達成に向けた近道になる場合と、コスト削減につながる場合がある
- オープンイノベーション成功には、その目的と投資姿勢、人的要因など複合的な要素がある
- 課題提示とアセット提示を組み合わせることで、明確なシグナルを送る
- 連携による新事業を起こしていく初期段階にある国内サーキュラーエコノミーでは、KDDIのようなプラットフォームも一つ参考になるのでは
- 自社のコア技術やサービスに磨きをかけることが、受発注の関係からオープンイノベーション関係に発展する要素となる
- 社会全体の課題と自社技術やサービスを結びつけてブラッシュアップしていく
- サプライチェーン全体を見渡すことで、オープンイノベーションや事業機会を見出す
- オープンイノベーションは強みを持ち寄り融合させる
- 連携を通じたエコシステムには金銭以上の価値が生まれる
- サプライチェーンを網羅するなどのエコシステム構築はそれ自体に価値がある
- これまでになかったコラボが生まれやすいのがサーキュラーエコノミーで、それもエコシステムとしての価値となる
- 競争領域と共創領域の見極め
- カーボンニュートラル文脈やESG文脈でサーキュラーエコノミーを位置づけている投資家や支援団体は多い。これらの文脈でサーキュラーエコノミーを位置づけることが現実的
- サーキュラーエコノミーを廃棄物管理の延長と捉えるか、新たな価値の源泉として捉えるか、捉え方が分かれている傾向にあるのでは
- 支援側はサーキュラーエコノミーを適切に認識し、企業側の新たな価値が生まれるような気付きを与えることが重要な役割
本対談は対談者の個人的主観に基づくもので、さらなる議論のきっかけとしていただければ幸いです。ご意見やフィードバックはお問い合わせフォームにてお送りいただきますようお願い申し上げます。
