サークルデザイン株式会社は2024年1月〜3月、サーキュラーエコノミーの基本から実践・現場視察まで行うプログラム(全5回)「環境・ウェルビーイング・経済の未来を導くサーキュラーエコノミーへ」を開催、のべ145名の方にご参加いただきました。本記事(後編)では第4・5回の概要と参加者の感想をご紹介します。(前編はこちら

第4回:サーキュラービジネス実践

第1回〜3回ではサーキュラーエコノミーの根本的理解が目的でしたが、第4回は実践者から学ぶ回として開催されました。

まず第1部では、サークルデザイン株式会社那須より、サーキュラーデザイン・ビジネスモデル・評価などのサーキュラービジネス実践に向けて知るべき事項を網羅的に記載した「サーキュラービジネス図鑑」について説明。第1-3回で学んできたシステム思考やバリューチェーンの観点をもとに、モノにおけるサーキュラーデザインの類型や各ビジネスモデルにおけるサーキュラービジネスモデルキャンバス(CBM)と代表的事例を共有。サーキュラービジネスを展開するにあたってのポイントを確認していきました。

第2部は、サーキュラービジネスの最前線にいる実践者から学ぶべく、株式会社クラス代表取締役社長の久保裕丈氏と株式会社リコー ESG戦略部 ESGセンター 製品エコデザインエキスパートの佐藤多加子氏から講義いただきました。

久保氏は、主にビジネスと循環性向上の観点から同社のサービスモデルを説明。同社は個人・法人向けに「家具と家電のレンタル・サブスク『CLAS』」を展開していますが、久保氏によると同社の事業について「モノをAs a Service的に利用できることから、PaaS(Product as a Service、商品のサービス化)という呼称が最も厳密な定義」だと強調。個人・法人双方で顧客数を順調に獲得している背景とそのビジネス構築過程を説明しました。耐久消費財の循環化需要やアセット・インフラの観点、「循環」と「利益」が交差する「循環在庫率」等、PaaSビジネスの肝ともいえる部分も惜しみなく共有された時間となりました。

佐藤氏からは、同社のサーキュラーエコノミーへの取り組みとそのエッセンスが共有されました。中期経営計画のマテリアリティやESGへの全社的取り組み、1994年に提唱された循環型社会実現のための同社独自コンセプト「コメットサークル」の紹介、ライフサイクル観点を意識した取り組みやサーキュラーエコノミーのKPI設定など、経営・組織とビジネスの視点双方を織り交ぜながら解説を加えました。同社は日本企業初の「サーキュラーエコノミーレポート」を2022年から発行しており、グリーン購入法におけるカーボンフットプリントの開示要求等、サーキュラーエコノミーへの取り組みをアセットとして整理・開示していくことや、さらなる取り組みを促すツールとして活用することで、中長期的機会となることを示しているといえます。

第5回:資源再生工場・里山見学+サーキュラービジネス構築ワークショップ(場所:石坂産業株式会社)

最終回である第5回は、現場で学ぶ回として、石坂産業株式会社を訪問しました。産業廃棄物処理・再資源化工場と同社が運営する里山「三富今昔村」の両方を視察。減量化・再資源化率98%の全天候型再資源化プラントを有する同社は「ごみをごみにしない」Zero Waste Design をビジョンに掲げ、業界における先進的な取り組みを実施しています。

当日は、石坂産業の人や自然を大切にするという価値観を体現した取り組みを細部にわたり見学しました。電動重機、土砂系混合廃棄物リサイクルに向けた分別、適切な分別レベルによる料金設定など数々の活動の現場を見て学びながら、バリューチェーン全体でどのように循環化ができるかという点に思いを巡らせました。

三富今昔村は、かつて不法投棄されたごみが散乱した状態を再生させ、今では1300種類以上の生物が生息するようになった、まさにリジェネレーションの現場です。生物多様性回復への取り組みや、オーガニックファーム、廃材を使ったアート、環境教育プログラムなど種々の再生型取り組みが行われていますが、これらはそれぞれ個別に行われているのではありません。「『つぎの暮らし』の在り方について、あなたとともに考えながら、あなたが行動を起こすきっかけになる場所でありたい」という同社の想いを実現するために、グランドデザインが描かれたうえで個別の取り組みが行われているのです。

最後は、弊社提供による「サーキュラー思考を育むワークショップ」を開催。「サーキュラーデザイン」「ビジネスモデル」「サプライチェーンにおける戦略」という3本立ての内容で構成。これまで一緒に学んできた内容を具現化する一つの方法として、「傘」を例にして想像力を膨らませながらサーキュラー思考を体感しました。

今後も、弊社はサーキュラーエコノミーを深く実践的に学ぶプログラムや支援活動を展開してまいります。

参加者の感想

プログラム終了後、参加者からは様々な感想が寄せられました。以下はその例です。

  • これまでのモノありきで豊かさを追求してきた社会からの転換として、それぞれの領域でサーキュラーエコノミーの社会実装へ知恵を絞る必要性をあらためて感じました。また、その際には、グリーンウォッシュリスクのような部分最適にとどまらず、全体最適のエコシステムをいかに形づくっていけるかが大きなカギを握るという認識をもったところです。
  • 各領域の専門家の方のお話を拝聴し、欧州、日本の動向などを理解する事が出来ました。最後に実際の現場を見るという経験したことで、一歩ずつでも前に進まないと何も変わらないという事を再認識しました

なお今回、プログラムの感想を詳細にお伺いするべく、プログラム参加者2名にインタビューを実施しました。

プログラムの感想(参加者2名へインタビュー)

① 川野 茉莉子さん(株式会社東レ経営研究所 シニアアナリスト)

Q: 普段の仕事内容は?

東レグループ向けに産業・経済動向を報告することに加え、個人の関心に基づき経済・産業に関して調査研究を行い社外にレポートを発信しています。

Q: サーキュラーエコノミーの取り組みは?

2017年頃にサーキュラーエコノミーという言葉を知りました。これからのビジネスや社会のあり方を変える可能性があると感じました。特に、プラスチックや蓄電池、自動車などの分野に関してサーキュラーエコノミーの動向を調査し、レポートを執筆しています。

Q: 本プログラムを受講しようと思ったきっかけについて

特定の分野については把握しているのですが、関心のある分野に偏ってしまっていました。そこで、もう一度原点に戻ろうと想い、加えてサークルデザインさんとのご縁もあり、プログラムを受講することとなりました。

Q: 受講した感想

企業動向を知ることなどプログラムがとても魅力的でした。最終回の石坂産業様の視察は、なかなか業務として現地に伺うという機会がないなか、大変貴重な回でした。

Q: プログラムの活かし方について

レポートに今後の課題や方向性とともに反映させていきたいと思っています。また、サーキュラーエコノミーの進化に合わせて継続的に学び続け、現場にも赴くようにしていきます。

② Sさん(IT企業勤務)

Q: 本プログラムを受講しようと思ったきっかけについて

新規事業創出に向けて、GX(グリーントランスフォーメーション)のトレンドを見ています。GXと聞くと再エネや固有の技術をイメージしがちですが、サーキュラーエコノミーの情報を得ておくことで、事業につながると考えていました。そんなタイミングでサークルデザインさんのプログラムを見つけました。

Q: 受講した感想

ビジネスとしてどうするかという点にプログラムは焦点を当てていました。事業として方向性を見出すのは難易度は高いなかで、今回のプログラムを受講してシェアリングやPaaSなどにヒントがあるのではないかと思うようになりました。また、石坂産業さんの取り組みには本当に驚きました。資源を回収しやすい設計などは重要な指針の一つになるのではないかと感じました。

全体的にはもっと多くの方に受講してほしかったとも思っています。いろんな方の視点や同じ悩みを共有できる仲間がいることは喜ばしいことでもありますし。

参考記事