謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2025年、紆余曲折を経ながら、サーキュラーエコノミーはその主流化に向けて、大きく進展する年になると考えられます。

2023年の「元年」から、2025年の「間(はざま)」へ

昨年2024年の年頭、2023年のサーキュラーエコノミーにおける進捗を踏まえ、2023年が本当の意味での「サーキュラーエコノミー元年」になるのではないかと申し述べました。2024年には産官学パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」での議論の進展に加え、「循環経済に関する関係閣僚会議」が開催され、「第五次循環型社会形成推進基本計画」においては循環経済が国家戦略として位置づけられました。2024年12月末には循環経済の移行加速化パッケージが公表され、地域活性化・資源自律・海外市場の取り込みに向けてもサーキュラーエコノミーの役割に期待がかかることが示されたところです。

EUでも持続可能な製品のためのエコデザイン規則の施行や委任法令策定に向けた動き、包装および包装廃棄物規制(PPWR)のEU理事会における採択、修理する権利指令の発効など、引き続きサーキュラーエコノミー関連規制が整備されました。

また、ISO59000シリーズ(3規格)の発行やグローバル全体でのサーキュラリティ向上を目的とするプロトコル「GCP(グローバル・サーキュラリティ・プロトコル)」の議論・調査進展など、グローバルスタンダードも整備されつつあります。ただし、GCPのインパクト調査文書「Global Circularity Protocol for Business Impact Analysis」などでも、スタンダード単体ではサーキュラリティを向上させるものとはならず、幅広い組織に活用されるための政策やインセンティブと接続される必要がある旨が強調されています。GCPは2025年に初版が公表される予定ですが、いずれにしてもISSB基準やCSRD、TNFD/TCFD等サーキュラーエコノミー以外のサステナビリティ開示のタスクもあるなか、こういったフレームワークを使用する真の目的を組織内で特定したうえで戦略的に活用できるかが問われる2025年となるのではないでしょうか。

一方で、「揺り戻し」にも直面する一年になりそうです。2期目のトランプ政権発足、フランス・韓国・ドイツ・カナダ等の政治基盤の不安定化、ウクライナ・中東・東アジア情勢の不確実性の高まりなどに影響され、サステナビリティ・サーキュラーエコノミーにおいても明確な方向性を見出だせない、または進捗の障壁になると捉えられる可能性があります。ただし、見方によってはサーキュラーエコノミーが持つ経済安全保障寄与の側面やサプライチェーン強靭化との親和性が再発見されうる状況にあります。

企業においても同様です。ナイキ、コカ・コーラ、ユニリーバ、レゴなど、より現実に即したサステナビリティのアプローチを取る動きも見られます。企業が外部からの批判を恐れサステナビリティ開示をあえて控える「グリーンハッシング」も特に欧米で台頭してきています。

サーキュラーエコノミーにおけるバックキャスティングとフォアキャスティング

そうしたなか、サステナビリティ関連メディアを運営するTrellis Group(旧GreenBiz)の会長兼共同創業者であるJoel Makower氏は24年12月、サステナビリティプロフェッショナルに簡易アンケートを実施し、650名の回答を得られたことを公表しました。

「現在のサステナビリティ関連業務におけるマインドセットで当てはまるものは?」という問いに対して、42%が「心配な状況だが、進展することに対して慎重ながらも楽観視している」と回答。また、全体の3分の1は落胆している、ストレスを感じていると答えました。楽観的な見方が多数を占めていますが、そうではない層も一定数存在していることが確認できています。Joel Makower氏は一方で、「これまで述べてきたように、サステナビリティは本質的に楽観的な仕事であり、解決策や大胆な目標、より良い未来に焦点を当てるものだ」と希望的観測を示しています。

これまで大胆なサステナビリティ目標をバックキャスティング型で掲げてきた欧米企業は、現実に即し科学的根拠に基づいたフォアキャスティングの視点も取り入れる必要性を感じているという見方もできます。そう考えると、一般的にフォアキャスティング思考が得意である日本企業の実直な積み重ねが改めてスポットライトを浴びることにもなるのではないでしょうか。

楽観と悲観、理想と現実の間でサーキュラーエコノミーは科学的根拠をベースに螺旋階段を上っていく、そんな時期に入っているのかもしれません。弊社ではこうした全体観をもとに2025年、企業や自治体のサーキュラーエコノミー移行を後押しすべく、いくつかの新サービスのローンチも含めて、鋭意活動してまいります。2025年もどうぞよろしくお願いいたします。(文:サークルデザイン株式会社 那須清和)

2025年弊社が注目したい、サーキュラーエコノミー5つのテーマ

上記のような観点を踏まえ、2025年に弊社が注目したい5つのマクロテーマを下記にまとめました。

1. 「揺り戻し」:フォアキャスティング・バックキャスティング両面から捉えるサーキュラーエコノミー

上述の通り、不安定化・混迷する国際政治情勢の影響を受けたサーキュラーエコノミー動向、現実対応を意識し始めた企業、物価高騰とのバランスを図る消費者のサステナビリティ行動など、「間」に揺れながらもどう螺旋階段を上るのか

2. サーキュラーエコノミーにおけるスタンダード(国内外)の策定と理解

ISO59000やGCPの策定などのグローバルスタンダード、国内における循環性指標の策定。それをどう自社戦略に落とし込んだ形で活用が広がっていくか

3. 地域でのサーキュラーエコノミー、面的な拡大

地域資源の持続的活用、公共調達等行政におけるサーキュラーエコノミー原則適用、実証やスタートアップの初期支援からスケールへの模索、連携を通じた資源の域内循環、建設・食・消費などにおける循環型慣行の進展、地域(地方自治体)の実情に応じたサーキュラーエコノミー施策や各地域でのサーキュラーエコノミー推進人材育成による面的展開

4. 循環型ビジネスモデルの深・進化と多様化・スケール化

例として、リユース・リファービッシュ・リマニュファクチュアリングなどアフターサービス分野とデジタル技術の掛け合わせ、物量管理の最適化を測るデジタルツール、デジタル製品パスポートのビジネス的活用、食のアップサイクル、自然資源の持続的活用、AI活用によるサーキュラーエコノミー進展など、様々なビジネスモデルとサーキュラーエコノミーが統合。また、そのエコシステム化。循環価値を築き、スケール化して収益として結果が表れる企業が増える可能性あり。

5. 日本版サーキュラーエコノミーの掘り下げと海外市場の取り込み

日本が強みとする分野や課題先進国として解決が急がれる分野とサーキュラーエコノミーの融合、グローバルサーキュラーエコノミーを基盤とした日本版サーキュラーエコノミーの明確化、素材・食・住・製造業・リサイクルなどサーキュラーエコノミー関連ノウハウやアジアへ日本の廃棄物管理システムの展開など